メンバーの記事
RITE の記事は「問い」から生まれます。問いは、問う人 ─ Questioner ─ が発する日々の感性。ここには、多くの人の感性が集まっています。
- No.02482026年10月12日
難しい言葉は、理解を運ばない
RITEで記事をつくり終えたとき、画面に並ぶ引用文献を眺めながら、ふと背筋が伸びる感覚がありました。知らなかった論文の名前、聞いたことのない研究者の言葉、精緻に組み上げられた考察の連なり。「自分の視野が広がった」という確かな手応えがある。で…
藤澤 稔 - No.02492026年10月12日
日常に非日常を
見知らぬ街の朝、路地の石畳に折りたたみ椅子を出した小さなカフェに入る。メニューは読めず、窓の外では聞き慣れない言語が飛び交い、次の一時間に何が起きるかまったく予測できない。それでも熱いコーヒーカップを両手で包んだとき、その重さと温度だけは自…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社8 reads - No.02502026年10月10日
負けを決めるのは、審判ではなく自分自身だった
目標を達成できなかった夜、胸の奥に重いものが落ちてくる感覚を、あなたも知っているはずです。肩が内側に丸まり、呼吸が浅くなり、まるでスタジアムの照明がすべて落ちたかのような暗さが広がる。不思議なのは、その感覚がスポーツで負けたときと区別がつか…
藤澤 稔1 reads - No.02512026年10月7日
直観を説明した瞬間、色彩はデザインになる
コワーキングスペースの壁に塗られたテラコッタ色の前で、足が止まったことがあります。なぜこの色なのか、その場では言葉が出てきません。ただ身体が、何かを感じ取っている。ところが隣にいた人に「なぜ気になるの?」と問われた瞬間、ぼんやりとした知覚は…
Akiko Iwamura5 reads - No.02522026年10月5日
好きなことが重くなるのは、外的善に汚染された瞬間だ
原稿を開くたびに、最初の数行は軽い。言葉が勝手に動き、指が文字を追う。ところが「これは読まれるか」と一度でも考えた瞬間、その軽さは消える。画面の前で固まり、書いた文を削り、また書く。同じ行為なのに、何かが根本的に変わっている。この感覚を「気…
藤澤 稔1 reads - No.02532026年9月30日
「間」が埋めているのは、言葉ではなく信頼だった
会議室で、誰かが話し終えた。0.8秒の静寂が訪れる。私はその空白に耐えられず、言葉を差し込んでしまった。後になって気づく——あの瞬間、私は沈黙を「空白」として恐れ、相手が差し出していたかもしれない何かを、自分の言葉で塗りつぶしてしまったのだ…
Akiko Iwamura4 reads - No.02542026年9月30日
自律を配る前に、脆弱性を配れ
朝五時半、アラームより先に目が覚める。隣室の母の体位を変え、胃ろうの管を確認し、着替えを済ませてから自分の朝食をかき込む。職場では「自律的に判断してください」と言われる。フレックスタイムで、タスクは自分で設定し、成果で評価される。その設計は…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社41 reads - No.02552026年9月23日
人間は、効率の外側でしか目的を持てない——「役に立つ」をやめたとき取り戻せるもの
スマートフォンのスクリーンタイム通知が届くたびに、奇妙な感覚を覚えます。一日の行動が数値に変換され、アプリ別の使用時間が棒グラフで並ぶ。その瞬間、自分が何かのシステムにとって「測定可能な単位」として存在していることを、身体が先に知ります。 …
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社17 reads - No.02562026年9月23日
お金では買えないものが、社会を支えている
保育サービスを契約し、家事代行を手配し、宅食を注文する。都市に暮らしていると、子育てに関わるほぼすべての行為に値段がついている。それなのに、なぜだろう——隣の部屋に誰が住んでいるか知らず、熱を出した子どもを頼める人が一人もいないとき、あの購…
勝 眞一郎バローレ総合研究所8 reads - No.02572026年9月22日
カイロスに触れる場所が、組織の地平を揺さぶる
サンプル選定会議が三時間を超えたとき、テーブルの上には「無難なネイビー」が残っていた。全員が少しずつ譲り合い、誰も傷つけない色。デザイナーは手元のコーヒーカップを見つめながら、何かが静かに失われた感覚を確かめていた。声を集めるほど判断が霞ん…
Akiko Iwamura5 reads - No.02582026年9月20日
時間に関する民主主義を取り戻すことが少子化対策にもたらすインパクト
保育と仕事と介護を、同じ一日に重ねることができない。2002年、バルセロナ市の窓口にそう訴えた市民の声が、「時間計画局(Oficina del Temps)」の発足を後押ししたと記録されています。少子化という言葉が人口統計の数値として語られ…
勝 眞一郎バローレ総合研究所16 reads - No.02592026年9月20日
育児の時間は、誰のものでもなかった
子どもが熱を出した朝、あなたは職場に電話をかけながら、保育園のキャンセル待ちリストを眺め、祖父母の予定を確認する。その数分間に、何十もの「時間の所有権」が交差します。誰かの時間を借り、誰かの予定を塗り替え、誰かの善意を消費する。育児とはつね…
勝 眞一郎バローレ総合研究所7 reads - No.02602026年9月20日
子どもは、コミュニティが産んでいた
鹿児島から南へ五百キロ、徳之島の伊仙町を訪れた行政担当者たちは、困惑して帰路につく。出生率は全国トップクラスなのに、特別な補助金も目を引く政策もない。あるのは、隣人が互いの田畑を手伝い、祭りの準備に朝から集まり、誰かの子が泣けば近所の大人が…
勝 眞一郎バローレ総合研究所8 reads - No.02612026年9月19日
「この人はなぜできないのか」を疑へ――すべての人を消耗させてきた自立という幻想
駅の改札を抜けて階段の前に立つ。車椅子を使うその人は、上りのエレベーターが反対ホームにしかないことを知っていて、今日も遠回りをする。 周囲の人は「大変だね」と思うかもしれない。けれど、「この駅の設計がおかしい」とは、なかなか考えない。問題…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社47 reads - No.02622026年9月15日
会話は終わらない、ただ中断されるだけだ
立食パーティーの会場で、気づくと同じ人と二十分話し続けていた経験はないでしょうか。周囲には挨拶したい人が何人もいる。でも、どうやって切り上げればいいのかわからない。「そろそろ……」と口を開きかけては引っ込め、相手の話に相槌を打ち続ける。強引…
Yusuke Matsuyama17 reads - No.02632026年9月13日
啐啄同時は、準備と触媒が交差する一点に宿る
雛が殻の内側をつつく音を、親鳥はどこで聞いているのだろう。卵の表面に耳を当てるわけでもなく、巣の外から時計を見るわけでもない。それでも親鳥は、まさにその瞬間に外側から殻をつつき始める。禅はこの奇跡的な同時性を「啐啄同時(そったくどうじ)」と…
三原重央3 reads - No.02642026年9月13日
社会モデルは保守の盾ではない――障害を「差異」として承認するために
「段差はスロープに変えました。合理的配慮は提供しています」 ある市役所の窓口でそう言われた車椅子ユーザーの友人は、何も返せなかった。 段差をなくしてほしかったわけではない。 自分の意思で、自分の生き方を選ぶ。その権利を認めてほしかった…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社101 reads - No.02652026年9月12日
円は、階層を溶かす最小の建築である
ソーシャルビジネスの現場で、対話が終わりに近づくころ、不思議なことが起きます。角張った長机の周りに座っていた参加者たちが、誰の指示もなく、自然と椅子を引き寄せて円をつくるのです。ファシリテーターが「感想を聞かせてください」と言った瞬間、身体…
Akiko Iwamura13 reads - No.02662026年9月12日
唾液が溶かすのは食物だけではなく、経験そのものだった
ある会で「よく噛まないと消化器系に負担がかかる」という話を聴いた夜、夕食の席で意識的にゆっくりと噛んでみた。口の中で食物がほぐれ、唾液と混ざり合い、かたちを失いながらなめらかに変容していく——あの「馴染む」という感覚は、何か別の体験に似てい…
三原重央8 reads - No.02672026年9月8日
「チームで戦え」――プロスポーツを模倣する企業は、排除の装置を内製化している
「全員が選手だ、試合に勝ちにいこう」――経営会議でその言葉を聞いたとき、私はふと思った。では、ベンチ外になるのは誰なのか。誰かが「スタメン落ち」し、誰かが「戦力外通告」を受ける前提が、すでにその比喩の中に埋め込まれている。スポーツ比喩は単な…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社29 reads - No.02682026年9月7日
肩幅は正解ではなく、骨格が答えを持っていた
電車のホームで長時間立っているとき、気づけば足が自然に開いている。料理中、まな板の前に立つとき、足は何かを知っているかのように幅を探している。「肩幅に開くといい」と聞いたことがある。でも、その根拠を誰かに尋ねたことはあるだろうか。頭が「正し…
三原重央14 reads - No.02692026年9月7日
両足の安心は、感覚を眠らせていた
道場の板間で、初めて相手に押されたときのことを覚えている。両足をしっかり踏ん張り、腰を落として構えた。それなのに、一瞬で重心が崩れた。膝が折れ、足裏が地面から浮きかけた。指導者に言われた通りに「安定した姿勢」をとっていたはずなのに、なぜ。次…
三原重央1 reads - No.02702026年9月6日
枯死と再生の循環を目の当たりにしたとき、人は初めて死を受け入れる
屋久島の原生林を歩いていると、苔むした巨大な倒木に足を止める瞬間がある。樹齢千年を超えるスギが地に伏し、その胴体から無数の若木が天へ伸びている。手を当てると、木はすでに柔らかく、指先が湿った繊維の奥へ沈んでいく。腐りながら生を育てているその…
杉下智彦屋久島尾之間診療所32 reads - No.02712026年9月5日
遊びこそが、最も真剣な行為である
「真面目にしなさい」と言われた瞬間、自分の何が変わったか、思い出してみてください。背筋が伸び、視線が前を向き、口角が下がった——しかし頭の中は、叱られた驚きで白くなっていたはずです。理解が深まったわけでも、誠実さが増したわけでもない。変わっ…
三原重央9 reads - No.02722026年9月5日
八は、数えるためではなく世界を開くために生まれた
八百屋の暖簾をくぐるとき、あるいは初詣で引いたおみくじに「八」の番号を見つけたとき、日本人の多くは一瞬だけ、数字の外側にある何かを感じます。それは「縁起がいい」という言葉で片づけられますが、その感覚の正体は何でしょうか。八百万の神、八百八町…
三原重央5 reads - No.02732026年9月5日
他人の問いは、あなたには届かない構造になっている
RITEを使い始めてから、ある非対称さに気づいた。自分が立てた問いから生まれた記事は、通知が来るたびに開く。けれど、他の誰かが立てた問いの一覧を、私はほとんど見ていない。これは私が他人に冷淡だからなのか。それとも、人はそもそも、自分と直接関…
藤澤 稔4 reads - No.02742026年9月5日
真面目さは、顔から始まっていた
「真面目にやりなさい」と言われた瞬間、あなたの身体は何をしましたか。おそらく表情が固まり、呼吸が浅くなり、動きが小さくなったはずです。肩が上がり、視線が定まり、笑いが消える。真面目さを求められるとき、私たちはまず顔を変えます。この身体的反応…
三原重央10 reads - No.02752026年9月5日
「何も残らない」は、語れない知識を見えない知識と混同している
書道の筆を持ったのは、ほんの数ヶ月だった。ベースは弦の張力を指先で覚えたころに手放した。ダンスは基礎ステップがようやく馴染んできたあたりで足が遠のいた。それぞれの終わりに、同じ感触が残った。「また中途半端に終わった」という、静かな自責。やり…
藤澤 稔 - No.02762026年9月5日
「やめる」が、経験を完成させる
RITEに参加した最初の夜、画面を閉じながら「これは続けなければいけないのだろうか」と思った。始めた瞬間から、何かが変わっていた。試してみるという軽い動機が、いつの間にか義務の重さを帯びていた。新しいものに触れることは、それ自体が目的だった…
藤澤 稔8 reads - No.02772026年9月4日
異なる「現実」を生きる人々は、どう共存できるのか
誰かの投稿を見て、静かに画面をスクロールしたことはないでしょうか。反論したいわけでも、賛同したいわけでもない。ただ、何かを言えば面倒なことになる、という予感だけがある。日本では、職場でも家族の食卓でも、政治や社会について語ることは長らく「空…
八木橋パチ日本アイ・ビー・エム株式会社97 reads