難しい言葉は、理解を運ばない
RITEで記事をつくり終えたとき、画面に並ぶ引用文献を眺めながら、ふと背筋が伸びる感覚がありました。知らなかった論文の名前、聞いたことのない研究者の言葉、精緻に組み上げられた考察の連なり。「自分の視野が広がった」という確かな手応えがある。でも、翌朝その記事を読み返すと、自分がほんとうに何かを理解したのか、それとも理解したという感覚だけを得たのか、判然としなくなることがあります。
月の裏側の写真を見て、月を知った気になる。その写真が精巧であればあるほど、自分が月面を歩いていないことを忘れやすくなる。この小さなずれの正体を、認識論と認知科学の両側から照らしてみたいと思います。
QUESTwith RITE
あなたの問いを、人文知 × 自然科学 × 社会科学で探求し、記事に編む。
記事一覧
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キーワードではなく、問いの意味で記事を探せます。 気になっていることを、自由な言葉で書いてみてください。
直観を説明した瞬間、色彩はデザインになる
コワーキングスペースの壁に塗られたテラコッタ色の前で、足が止まったことがあります。なぜこの色なのか、その場では言葉が出てきません。ただ身体が、何かを感じ取っている。ところが隣にいた人に「なぜ気になるの?」と問われた瞬間、ぼんやりとした知覚は…
好きなことが重くなるのは、外的善に汚染された瞬間だ
原稿を開くたびに、最初の数行は軽い。言葉が勝手に動き、指が文字を追う。ところが「これは読まれるか」と一度でも考えた瞬間、その軽さは消える。画面の前で固まり、書いた文を削り、また書く。同じ行為なのに、何かが根本的に変わっている。この感覚を「気…
「間」が埋めているのは、言葉ではなく信頼だった
会議室で、誰かが話し終えた。0.8秒の静寂が訪れる。私はその空白に耐えられず、言葉を差し込んでしまった。後になって気づく——あの瞬間、私は沈黙を「空白」として恐れ、相手が差し出していたかもしれない何かを、自分の言葉で塗りつぶしてしまったのだ…
自律を配る前に、脆弱性を配れ
朝五時半、アラームより先に目が覚める。隣室の母の体位を変え、胃ろうの管を確認し、着替えを済ませてから自分の朝食をかき込む。職場では「自律的に判断してください」と言われる。フレックスタイムで、タスクは自分で設定し、成果で評価される。その設計は…
人間は、効率の外側でしか目的を持てない——「役に立つ」をやめたとき取り戻せるもの
スマートフォンのスクリーンタイム通知が届くたびに、奇妙な感覚を覚えます。一日の行動が数値に変換され、アプリ別の使用時間が棒グラフで並ぶ。その瞬間、自分が何かのシステムにとって「測定可能な単位」として存在していることを、身体が先に知ります。 …
お金では買えないものが、社会を支えている
保育サービスを契約し、家事代行を手配し、宅食を注文する。都市に暮らしていると、子育てに関わるほぼすべての行為に値段がついている。それなのに、なぜだろう——隣の部屋に誰が住んでいるか知らず、熱を出した子どもを頼める人が一人もいないとき、あの購…
カイロスに触れる場所が、組織の地平を揺さぶる
サンプル選定会議が三時間を超えたとき、テーブルの上には「無難なネイビー」が残っていた。全員が少しずつ譲り合い、誰も傷つけない色。デザイナーは手元のコーヒーカップを見つめながら、何かが静かに失われた感覚を確かめていた。声を集めるほど判断が霞ん…
時間に関する民主主義を取り戻すことが少子化対策にもたらすインパクト
保育と仕事と介護を、同じ一日に重ねることができない。2002年、バルセロナ市の窓口にそう訴えた市民の声が、「時間計画局(Oficina del Temps)」の発足を後押ししたと記録されています。少子化という言葉が人口統計の数値として語られ…
育児の時間は、誰のものでもなかった
子どもが熱を出した朝、あなたは職場に電話をかけながら、保育園のキャンセル待ちリストを眺め、祖父母の予定を確認する。その数分間に、何十もの「時間の所有権」が交差します。誰かの時間を借り、誰かの予定を塗り替え、誰かの善意を消費する。育児とはつね…
子どもは、コミュニティが産んでいた
鹿児島から南へ五百キロ、徳之島の伊仙町を訪れた行政担当者たちは、困惑して帰路につく。出生率は全国トップクラスなのに、特別な補助金も目を引く政策もない。あるのは、隣人が互いの田畑を手伝い、祭りの準備に朝から集まり、誰かの子が泣けば近所の大人が…
「この人はなぜできないのか」を疑へ――すべての人を消耗させてきた自立という幻想
駅の改札を抜けて階段の前に立つ。車椅子を使うその人は、上りのエレベーターが反対ホームにしかないことを知っていて、今日も遠回りをする。 周囲の人は「大変だね」と思うかもしれない。けれど、「この駅の設計がおかしい」とは、なかなか考えない。問題…
会話は終わらない、ただ中断されるだけだ
立食パーティーの会場で、気づくと同じ人と二十分話し続けていた経験はないでしょうか。周囲には挨拶したい人が何人もいる。でも、どうやって切り上げればいいのかわからない。「そろそろ……」と口を開きかけては引っ込め、相手の話に相槌を打ち続ける。強引…
問い手の広場
いま 221 名 の問い手が、それぞれの問いを持ち寄っています。顔ぶれは週ごとに変わるので、また覗きに来てください。 これまでの全員は メンバー一覧から。次は、あなたの問いが、ここに並ぶ番です。
採用面接の場で、候補者が流暢に「私の強みはAIを活用した業務効率化です」と答えるとき、面接官はどこか釈然としない感覚を覚えることがある。言葉は整っている。論理も…
この問いを読む →七月の終わり、教室に折り紙の音が満ちる。子どもたちの指は迷わない——鶴の折り方は体に入っている。しかし「なぜ折るの?」と問われた担任教員が、しばらく黙った。被爆…
この問いを読む →誰かの手のひらが背中にそっと触れた瞬間、言葉より先に何かが伝わった経験はないでしょうか。その感覚は生物学的な事実であると同時に、文化が長い時間をかけて書き込んだ…
この問いを読む →朝、目が覚める。肺が勝手に動いて空気を取り込み、心臓が一度も頼んでいないのに脈を打ち続けている。窓から差し込む光も、昨夜誰かが作った食事も、自分が「受け取ろう」…
この問いを読む →蝉が鳴き出した夜、ふと気づいた。今年はホタルを見ていない。あの虫が飛ぶのは、梅雨の合間の、曇りとも晴れとも言えない宙ぶらりんな夜だった。降れば土砂降り、晴れれば…
この問いを読む →2歳ぐらいの子どもが親のスマートフォンを手に取り、画面を指でなぞる。絵が動き、音が鳴り、また指を動かす。その集中した顔は、積み木を積むときとも、砂をつかむときと…
この問いを読む →数ヶ月ぶりに神様と生き物と島民がくらす離島の小さな浜に戻った時に目に入ったのは、異国の音楽と煌びやかなライトをまとった新しい店だった。胸の奥に湧いたのは環境問題…
この問いを読む →会議室で、誰かの発言が宙に浮いたまま着地しない瞬間を経験したことがあるはずです。論理的には正しい。データもある。それでも場が動かない。その沈黙の中で、私たちは何…
この問いを読む →会議室の空気が変わる瞬間がある。60代のベテランが「俺たちの時代はこうだった」と語り始めた瞬間、若手の目が一斉に伏せられる。その沈黙は反論でも退屈でもなく、もっ…
この問いを読む →引き出しの奥に、誰が見ても「ただの石」がある。丸くもなく、光りもしない、灰色の小石。でも手に取った瞬間、指の腹がその重さを覚えていて、言葉より先に何かが戻ってく…
この問いを読む →RITEで記事をつくり終えたとき、画面に並ぶ引用文献を眺めながら、ふと背筋が伸びる感覚がありました。知らなかった論文の名前、聞いたことのない研究者の言葉、精緻に…
この問いを読む →RITE(ライト)
RITE は、NPO 法人ミラツクが運営する人と AI の共創メディアです。あなたが送り出してくれた問いに、ミラツクが 2008 年から積み上げてきた知の基盤とが連動して、一本の記事を編み上げます。
問いを投げかけるという、新しい書き手の世界を楽しんでください。